教授ご挨拶

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2025年4月1日付けで和歌山県立医科大学泌尿器科学講座の教授を拝命いたしました柑本康夫です。当教室のホームページをご覧いただき有難うございます。
和歌山県立医科大学泌尿器科学講座は、1964年に皮膚科泌尿器科学講座から分離独立し、以来、金沢 稔先生、大川順正先生、新家俊明先生、原 勲先生が教授を務められ、私が第5代目となります。60年余りに及ぶ教室の歴史の中で培われてきた伝統を守りつつ、国内最高水準の診療、研究、教育を目標に新たな教室づくりを進めて参ります。
私たちの目指すところは、「患者さんに優しい高度な泌尿器科医療」を提供することです。そのために、「為せば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり」、「Where there is a will, there is a way」の気持ちをもって診療、研究、教育に取り組んで参ります。

診療:地域に最先端の泌尿器科医療を!

泌尿器科では、尿路(腎、尿管、膀胱、尿道)および男性生殖器(前立腺、精巣、陰茎)、さらに副腎や後腹膜に発生する疾患を扱っています。近年、腎がん、前立腺がんなどの悪性腫瘍をはじめ、高齢化に伴って排尿障害、尿路結石、尿路感染症なども増加傾向にあり、私たち泌尿器科医の果たすべき役割は益々大きくなっています。
2025年4月現在、当科には泌尿器科専門医8名、泌尿器科指導医3名が在籍しており、さらに3名が泌尿器腹腔鏡技術認定、2名が泌尿器ロボット支援手術プロクター認定、1名が腎移植専門医を取得しています。今日、泌尿器悪性腫瘍のほとんどにロボット支援手術が保険適用となっていますが、当科ではこれらの手術を先進的に導入してきただけでなく、高難度とされる膀胱がんにおける体腔内尿路変向術や腎がんにおける下大静脈腫瘍塞栓摘除術も行っています。手術に加え、近年、次々と開発されてきた免疫チェックポイント阻害薬などの新薬や放射線治療を組み合わせた集学的治療にも積極的に取り組んでいます。また、大学病院としては稀ですが、尿路結石症の総合的診療も行っているのが当科の特色です。体外衝撃波結石破砕術(ESWL)や内視鏡手術(PNL、TUL、ECIRS)だけでなく、結石形成の原因診断や再発予防にも積極的に取り組んでいます。
私たちは、和歌山県内唯一の大学病院として、地域に最先端の高度な泌尿器科医療を安全に提供するため努力して参ります。

研究:未来の泌尿器科医療を創る!

私たちが目指す「患者さんに優しい高度な泌尿器科医療」を提供するためには、疾患の原因解明や新規治療法開発のための基礎研究、臨床研究も必要です。また、研究に従事することによって養われる論理的思考は、より良い診療が行える泌尿器科医の育成にも繋がると信じています。
当科では、おもに尿路結石症や泌尿器悪性腫瘍をテーマとし、日常臨床で生じた疑問を解決するための研究に取り組んでいます。基礎研究においては、本学および国内の基礎医学講座との連携により、高度な手法を利用した研究が行えるように努めています。臨床研究においては、自施設だけでなく、教室の関連病院や国内の他施設と連携した多施設共同研究や医工連携研究にも取り組んでいます。
私たちは、今日の医療レベルに満足することなく、「未来の泌尿器科医療を創る」という心構えで研究を進めて参ります。

教育:次世代を担う泌尿器科医の育成

私たちに課せられたもう一つの大きな責務は、次世代を担う泌尿器科医の育成です。現在、当科では和歌山県および大阪南部の13病院に泌尿器科医を派遣しています。大学病院だけが高度で先進的な医療を提供するのではなく、それぞれの地域で質の高い泌尿器科医療を受けていただけるようにするためには、優秀な泌尿器科医の育成が不可欠です。
私は、医聖?華岡青洲が医塾?春林軒を開いた紀の川市で生まれ育ちました。青洲の医療理念である「内外合一(ないがいごういつ)?活物窮理(かつぶつきゅうり)」を実践できる泌尿器科医を育成したいと考えています。「内外合一」とは、内科、外科を一体として患者さんの全身状態を総合的に把握することの重要性を説いており、手術だけでなく、内科的な診断から薬物療法まで担当する泌尿器科医には必須の理念です。「活物窮理」とは、患者さんを深く観察し、その中にある真理(疾患のメカニズム)を究めることを意味しており、日常臨床の疑問を研究へと発展させるリサーチマインドの涵養や、個々の患者さんに応じたオーダーメイド医療に繋がる理念です。
「患者さんに優しい高度な泌尿器科医療」を広く提供するためには、大学に在籍する一部の教室員の力だけでは不十分であり、関連病院を含めた教室員全員が同じ目標に向かって努力することが必要です。そのためには、臨床や研究において教室員が高いモチベーションをもって活躍できるような環境を整えることこそ、教室を任された私の責務と考えています。泌尿器科に興味を持たれている学生や初期研修医の皆さん、是非、私たちと一緒にこれからの泌尿器科医療を担って行きましょう。心よりお待ちしております。