尿路感染症
主な尿路感染症としては『膀胱炎』、『腎盂腎炎』、『前立腺炎』、『尿道炎』があります。
膀胱炎と尿道炎は発熱がなく全身症状も軽微であるため、外来通院での治療が中心ですが、腎盂腎炎や前立腺炎は高熱を伴い全身症状も重篤となりやすく、入院での治療が基本となります。
1:膀胱炎
膀胱炎は、性的活動期(10~50歳代)の女性に多い病気です。症状は排尿時痛(おしっこをするときに痛みを感じる)、頻尿(おしっこの回数が多く、1回の排尿量は少ない)、残尿感(おしっこをした後に残った感じがする)、下腹部不快感、血尿(おしっこに血が混じる)などで、発熱を伴わないのが一般的です。細菌が膀胱の中に入り、炎症を起こすことが原因です。治療法は細菌の種類に応じて抗菌薬を内服することです。またしっかりと飲水を行い、尿をたくさん出して細菌を追い出すことも重要です。
2:腎盂腎炎
腎盂腎炎は、細菌に感染した尿が膀胱から尿管を逆流し、腎臓に感染を起こす病気です。通常は膀胱から尿管に尿が逆流することはありませんが、このような逆流が起こるような病気や、尿がうっ滞するような尿管結石などが背景に存在することがしばしばあります。膀胱炎とは異なり、38℃以上の高熱を伴うことが多く、腰背部痛や膀胱炎と同様の排尿に伴う症状がみられます。腎臓の中の血管に菌が侵入し、全身に細菌が回ってしまう状態(敗血症)に至ることがあり、重症化し集中治療室(ICU)での治療が必要になることもあります。抗菌薬による治療とともに、尿管結石などで尿のうっ滞が起きている場合は、尿を体の外に出す処置(ドレナージ)が必要になります。ドレナージの方法には尿管ステント留置(図1)や腎瘻造設術(図2)などがあります。


3:前立腺炎
前立腺は男性のみに存在し、膀胱の下に尿道を取り囲むように存在します。膀胱炎と同様に細菌が侵入し、前立腺に炎症を起こします。もともと前立腺肥大症があり残尿が多い人に起こりやすく、また前立腺炎を発症することでさらに前立腺は腫脹し、排尿困難感や頻尿、尿閉(おしっこが全く出ない)をきたすことがあります。特に前立腺生検(前立腺癌の有無を調べる検査)を行った後にも起こることがあります。前立腺炎では腎盂腎炎と同様に38℃以上の高熱が出ることが多く、敗血症に至ることもしばしばあります。治療は抗菌薬の投与に加えて、排尿困難が強い場合には、尿道カテーテルや膀胱瘻(図3)の留置が必要となります。

4:尿道炎
尿道炎は、尿道に細菌が感染して炎症を起こすものです。多くは性行為に関連したもの(性行為感染症)とされています。尿道に感染を起こす細菌には淋菌、クラミジア、マイコプラズマなどがあります。淋菌性尿道炎では、感染機会から2~6日の潜伏期間を経て、尿道の先端から黄色膿性の分泌物が出て排尿初期に激しい痛みが出現します。一方、クラミジアやマイコプラズマによる尿道炎では、潜伏期間が14~30日と比較的長く、分泌物は透明でねばねばしたもので痛みや不快感も淋菌に比べて軽いことがほとんどです。若年者で発症率が増加しており、避妊具を適切に使用すること、感染した場合には、パートナーも同時に受診し、完全に治ったことが確認されるまで通院することが重要です。